あなたの胸で眠らせて −5−

 オレはそうして10分ほど放心していただろうか。
 だけどいつまでもこのままエントランスホールで座り込んでいてもどうにもならない。オレは取りあえずバイトに行くことにしてマンションを出た。

 本当は今日は9時30分までに店に入ればいいんでまだちょっと早いんだけど、早めに行って給料の前借りをさせて貰えないか頼んでみようと思ったんだ。
 浩二が出張に出て最低でも一週間は帰ってこないのがはっきりした今となっては、うだうだ過ぎたことを考えてても仕方がない。これからの身の振り方を考えないと。
 落ち込むだけ落ち込んだら、少しは前向きに考えられるようになった。
 何はなくともまずはお金。それから一週間の寝床の確保だ!
 一番いいのはネットカフェだよな。24時間営業の所ならシャワーもあるし、長時間のパック料金なら一晩二千円くらいで済むらしい。オレは行ったこと無いんだけど、ネットゲームにはまって泊まり込んでたという奴から聞いたことがある。
 だけど入会には身分証明になるものがいるはず。免許証も保険証も何もない今のオレには無理だ。
 ホテルなら住所を書くだけで身分証明まではいらないから、カプセルホテルはどうだろう? カプセルホテルなら一泊四千円くらいですむ。去年の夏休みに出先でトラブって帰れなくなって利用したことがあるんだけど、確かそれくらいの値段だった。
 でも1日、2日ならともかく、何日かかるか分からない状況で1日四千円はちょっときついな。いくらお金が借りられるかも分からないし、食費だけじゃなく着替えとか何もない状況だからその辺にかかるお金も考えて出来るだけ出費は抑えないと。
 そうなると、やっぱり何とか泊めてくれる友達を捕まえなきゃ駄目だな。
 夏休みという今の時期が悔やまれる。泊めて貰いやすい下宿組の友人達は大抵実家に帰ってるから。
 でもバイトやクラブの都合でこっちに残ってる奴もいるし、何とかなる! ……はず。
 徒歩で20分ほどのバイト先までの道すがら、オレは色々と考えを巡らせながら歩いた。



「先月はこっちの無理を聞いて貰ったから何とかしてあげたいけど、前借りはねぇ……うちはそういうの認めてないんだよね」
 バイト先のファミリーレストラン『フェリシア』の奥にある小さな事務所で、眉間に皺を寄せた店長の尾崎さんと向き合う。
「やっぱりそうですよね」
 うーん、やっぱり無理か。駄目元で前借りを掛け合ってみたんだけど、やっぱり駄目となると落ち込むな。
 こういうチェーン店では色々と決まり事があって、1店舗の店長の一存では決められないことが沢山あるらしいから。とは言え、どーするかな。
 お金を貸してくれそうな相手に心当たりがないことはないんだけど、そいつに頼むと見返りに何を要求されるかが分かり切ってるから出来ればその辺には頼りたくないんだけど……
「――そうだなぁ、僕のポケットマネーから貸して、給料から天引きするっていう形ならいいかな」
「え? あの……でも、いいんですか?」
「まあ事情が事情だしねぇ」
 尾崎さんは軽く眉を上げながら苦笑した。
「それじゃあ、取りあえず五万くらいでいいかなぁ? 足りないようだったらまた都合すると言うことで」
「本当に助かります。ありがとうございます」
 尾崎さんがバイトのオレにこんなに親身になってくれるのは、この人がバイトから店長まで登り詰めたという経歴からかな。
 尾崎さんは高校時代からここでバイトを初め、大学在学中もバイトを続けて卒業後は正社員として就職し、その後店長に抜擢されたそうだ。だから店長とはいえまだオレと同じ20代のはずだ。
「俊也君は真面目にやってくれてるからね。これからも頑張って貰わないとこっちも困るから」
 ありがたいお言葉と共に、尾崎さんは自分の机の引き出しの小さな金庫からお札を出して茶封筒に入れてくれた。人生真面目に生きてればちょっとはいいこともあるんだ。へこみ続けていた気分が、お金の都合が付いた安心感と共に少し浮上した。
 これで安積さんから借りたお金が返せる。
「しっかし無一文で締め出しとは、君の従弟は容赦ないなぁ」
「ホントにそうですよね」
 オレはバイト先に男の恋人と同棲するのに住所が変わりましたとは言えないんで、こっちに越してきた従弟の家に居候を始めたということにして住所変更を出したんだ。
 それにしたって、誰が聞いても浩二の仕打ちはひどいよな。
「それで昨日の夜はどうしたんだ? 野宿?」
「あー、えっと……大学の先輩の家にご厄介に……」
 まさか通りすがりの猫傘兄ちゃんの家に転がり込みましたとは非常識すぎて言えなくて、とっさに嘘を付いてしまった。
 そう。まったく見知らぬ人な安積さんの家に一泊しちゃったオレが、安積さんの防犯意識をどうこう言えた義理じゃないんだよな。危機意識なさ過ぎなのはオレの方だよ。
 オレは自分の人を見る目のなさには自信があるのに。

 まったくホントに自慢にならないが、オレは人を見る目が全く無い。今回の浩二のことだってそうだし、逆に高校時代は嫌な奴だと思って避けてた奴がいい奴だと卒業間際に気付いたりと、まったくもって見る目がない。
 でも安積さんは誰が見ても一目瞭然の“いい人”だもんな。さすがのオレでも分かる。とはいえそんなこと安積さんに会ったことのない尾崎さんには分からないし、いちいち説明するのも面倒だから、『いい人に拾われた』より『先輩に泊めて貰った』ということにしておこう。
「宿の当てがあるならそんなに心配はいらないね」
「いや、でも先輩には彼女がいるから、そう毎日泊めて貰うわけには……」
 そうなんだよね。特に今日は金曜日だし、彼女が土日が休みの職場勤めか学生なら泊まりに来るかも知れない。化粧品まで置いているくらいの仲の彼女なら当然泊まりは有りだろう。
 でも今朝、勝手に部屋に入ってていいって言ってくれたってことは、今日は彼女が来る予定はないんだろうな。
 さすがに今日も泊めてもらおうなんて気はないけど、一緒に晩ご飯を食べるくらいはいいかもしれない。
 ハンバーグをしばらく食べてないって言ってたから、ハンバーグは好きなんだろう。


「あの、すみません藤森さん。こういうわけでオレ、出来るだけ食費とか浮かせたいんで……お願いできますか?」
 尾崎さんと話を終えるとオレは、事務所に顔を出したついでにしっかりオレと店長の話を立ち聞きしていたパートの藤森さんに両手を合わせて上目遣いにお願いポーズを取ってみた。
「いいよ。その先輩の分も取っておいてあげるから。大変だけど頑張んなさいね。先輩に迷惑掛けちゃ駄目よ」
 これだけの会話で話が通じちゃう。ここの暗黙の了解な話。オレのお願いって言うのは、余ったり売り物にならなくなった料理を持って帰らせて欲しいってことなんだ。
 藤森さんはキッチンスタッフだから、フロアスタッフのオレより貰いやすいから。
 勝手に職場の物を持って帰っちゃうのは、たとえ大したことないものでも“業務上横領”という罪になっちゃうのだそうだけど、売り物にならなくて“廃棄”になったものを食べるくらいはここでは許されていて、途中で割れたハンバーグとか作り置きしてたけど規定の時間を過ぎてお客に出せなくなったサラダなんかはよく貰うんだ。
 本当は食中毒とか何か問題が起きるとヤバいんで、あくまでも店内で食べることっていう決まりがある。それでもこっそり持って帰る人もいるが、みんな見て見ぬふりをして公然の秘密としてまかり通っている。
 特にこの、パートなんだけどこの店では誰よりも古参で、実質は店長以上の発言力を持つ藤森さんを味方に付ければ怖い物無しなんである。
 幸いオレはその藤森さんに気に入られてる。
 彼女にもオレと同じくらいの歳の息子さんがいて、その息子さんもひとり暮らしをしながら大学に通ってるそうで、オレのことを見ていると息子を見ているようで放っておけないらしい。
 これで安積さんへのお礼……というか、安積さんの所へ寄る口実を作ったオレはひとまず安心して仕事に就くことにした。


 白のシャツに黒のスカーフとズボンというシンプルな制服に着替えると、オレはいつものようにフロアに立ってメニューボードの確認をする。
「宮本君、今日は早いね」
 テーブルを回って点検をしていたフロアチーフの山内さんが、オレに気付いて声を掛けてきた。
 隠そうとしたところでオレの災難話は、どうせ藤森さんの口からその日の内にスタッフ中に広がっちゃうのが分かっているから、オレは山内さんにこれまでの経過を簡単に説明した。
「それは大変だったな。だけど、何とかマンションの管理人さんに話が付けられないか? 君の伯母さん――その従弟の浩二さんのお母さんに電話して貰うとか」
 ああ、それいいな。浩二が本当にオレの従弟だったらその手は使えただろう。けど、実際はただの同棲相手だし、浩二の母親の電話番号どころかどこに住んでるのかすら知らない。
「あー、伯母さんは入院中で迷惑掛けたくないし……伯父さんは亡くなっちゃってるし」
 なんて適当に病人と死人にしてしまった。ごめんなさい、浩二のご両親様。恨むならご子息をどうぞ。
「それじゃあ無理か」
 山内さんは、銀縁眼鏡の奥の細い目をさらに細めて考え込んだ。
「……じゃあその浩二さんから管理人に電話して貰うとか」
「いえだから、浩二には連絡が付かないんですってば」
「いや、会社が社員の連絡先を部外者に言わないのは普通だからそれは分かるよ。だけど、浩二さんに管理人に電話を掛けてくれるように伝言を頼むくらいは会社も引き受けてくれるかもしれないって話だよ」
「ああ、それはいいかも!」
 それは考えつかなかった。さすが年の功。
 山内さんは店長の尾崎さんより年上の40過ぎなのにフロアチーフ止まりなのは、途中で転職してきたせいらしい。年下の店長の下で働くってのはやりにくくないのかな。
 けど、こういうある程度年齢のいった人がフロアに立って指示をしていると格好が付く。客から見たら彼が店長に見えるだろうな。
「それじゃ、早いとこ連絡をしたほうがいいんじゃない?」
 横から話に入ってきた、オレと同じフロア担当のパートのおばさんがオレをせき立てる。
「でも、もう始まっちゃったし」
「いいよ。まだお客様は来てないから。さっさと済ました方がすっきりするだろ」
 もう店の始業時間を過ぎていたんで電話をするのをためらったんだけど、山内さんの許可が出たんでオレは事務所の電話を借りてもう一度、浩二の会社に電話をすることにした。
 会社の電話に出たのは朝と同じお姉さんだったお陰で、話はすぐに通じた。お姉さんもそれくらいならと伝言を引き受けてくれたし、オレはホッとして電話を切った。

 しかし、今日は朝っぱらから慌ただしく色んな人に色々とお願いしまくってやたらと疲れた。
 だけど仕事の手を抜くわけにはいかない。何たって給料前借りしちゃってるし。
 オレはフロアに戻ると、いつものように仕事の打ち合わせや息抜きに来るサラリーマンや暇つぶしに集まるおばさま方などの接客に勤しみ、一所懸命に働いた。

 混み合う昼時を乗り切って、遅い昼休みに入ったオレの所に藤森さんがやって来た。
「はい、これ今日のお昼にしなさい。それからこっちは晩ご飯にね」
「うわ、ありがとうございます」
 藤森さんは早々に晩ご飯を調達してくれたらしい。ついでに昼ご飯も。
 お昼用にと持ってきてくれたのはサンドイッチだった。それとは別にきちんとタッパーに入っているのは、この店一押しの『和風ハンバーグ』。それと別のタッパーにはサラダも入っている。さらに別のビニール袋にはフランスパンとクロワッサンも。
 1食分の晩ご飯に十分なものが揃っていた。
 別に藤森さんが作ってくれたわけでは無いんだけど、やっぱり仕事の手を止めて用意をしてくれたんだからありがたい。
 藤森さんありがとう。いつも子供の自慢話を右から左に聞き流しててごめん。今度はダンナの愚痴でも何でもしっかり聞かせていただきます! と心に誓いつつ、オレはサンドイッチを食べるとまた仕事に戻った。

 今日のオレの勤務時間は午後6時まで。仕事を終えたオレは、浩二のマンションへは寄らず安積さんの部屋へと向かった。
 電話で伝言を頼んでから半日も経っていないから、まだ管理人さんに連絡が行っていなくてがっかりする。なんてことになったら嫌だったというのもあるけど、何だか無性にあの部屋へ、安積さんに会いに行きたかった。彼の笑顔を見てほんわかしたい気分だったんだ。
 お土産もあるし。オレは朝とは打って変わって軽い足取りで家路を急いだ。



「あー、腹減ったー」
 オレはテーブルの上に置いたタッパーを恨めしく眺める。
 すぐ目の前に食べ物があるのに手が付けられないってのは辛い。別に待ってなきゃいけない訳じゃないけど、待っていたい。
 言われたとおりの場所から鍵を取って勝手に安積さんの部屋に上がり込んだオレは、用意して貰った晩ご飯をテーブルに並べて安積さんを待っていた。と言ってもお皿とかまで勝手に出すのはマズいと思ってタッパーにいれたままなんだけど。
 それでもいつでも食べられるよう用意をしたのに、肝心の安積さんが帰ってこない。
 昨日はたまたま早かっただけなのかな。オレに声を掛けてくれた時間から逆算すると、普通に5時頃に退社する会社にお勤めだと思ったんだけど、今日はもう9時近くになるのに安積さんはまだ帰ってこない。
「週末だから飲みにでも行っちゃったのかな」
 でも、オレが来るかもしれないって可能性もあるのに放っておいて飲みに行くか? と、ちょっと自分の想像にムカッと来たが、思い直す。別に安積さんがオレの心配なんてする義理はまるきり無いんだ。飲みに行こうが彼女の家に行こうが自由なんだ。
 やっぱりオレはお腹が空くとネガティブな思考になってしまう。
 見えているから食べたくなるんだ! と、オレはテーブルから離れてベッドの上に転がってみた。この小さなアパートの部屋じゃ他に逃げ場はなかったから。

 安積さんの部屋は、建物の外装は古いけど中はリフォームされたらしく壁紙は綺麗だし床もフローリングになっている。
 間取りは入ってすぐの左側がキッチンスペースで、右がお風呂とトイレ。そこを抜けると八畳ほどの部屋、という縦長タイプのワンルームだ。
 独身男のひとり暮らしならこれで十分だろう。オレが前に独りで住んでたアパートも広さ的には似たような物だったし。
「けど、ふたりで暮らすにはやっぱちょっと狭いよな……」
 思わず知らずに呟いてしまう。このままここにいられればどんなにいいだろう。だけどそれは無理な話だ。安積さんには安積さんの生活があるし、何よりオレはあの人の友達ですらない赤の他人だ。
 今日は借りたお金を返して、一緒に晩ご飯を食べたら出て行かなくちゃ。
 今夜はカプセルホテルに泊まって、明日大学に行ってクラブ活動に来ている友達か、そいつの携帯から連絡の付く友達の家に泊めて貰えないか頼んでみよう。
 これ以上安積さんに迷惑を掛けるわけにはいかない。
 ベッドの上で、オレは枕を抱えて溜息をついた。いつもと違う硬いマットレス。抱え込んだ枕の匂いも浩二のとは違う。
 だけど落ち着く。
 人の気配が欲しい。ひとりは嫌だ。

 オレは中学、高校とずっと寮の集団生活の中で暮らしてきたせいか、人がいないと落ち着かない体質になっちゃったらしい。中学時代は4人部屋、高校でも2人部屋だったもんな。
 ずっと寮暮らしだったから、大学生になったのを機に自由なひとり暮らしってのをやってみたんだけど、いざ始めてみたら全然駄目だった。
 人の気配がないのが寂しいというか物足りないというか。いつもあった物がないというのは落ち着かない。結果、なかなかひとりのアパートの部屋へ帰る気がしなくて、授業が終わればバイトに行くか夜の街に遊びに行くかのどちらかのような毎日で、そうやって遊び歩くうちに浩二と知り合ったんだ。
 そして誘われるまま、下宿を引き払ってあいつのマンションに転がり込んだ。
 ただオレと付き合いたいって奴は他にもいたけど、浩二は一緒に暮らそうと言ってくれたから。
 オレのことが好きだと、ずっと一緒にいたいって言ってくれたから。なのに――
「またひとりになっちゃったな……」
 別に大したことじゃない。元に戻っただけだ。また元の下宿を借り直すか、どこか新しいアパートを探せばいい。
 親からの仕送りに、バイト代を貯めた貯金も少しはある。やっていけるさ。ただちょっと寂しいだけだ。――大したことじゃない。大したことじゃないのに、ないけど、やっぱ落ち込む。
 オレは落ち込んだ気分そのままに、ベッドに思いっきり突っ伏した。


 ふっと意識が戻る。というか、気が付くと辺りは真っ暗だった。何だ? 何で?
 ……ああ、ここ、安積さんの部屋だった。ベッドに転がって待ってる間に寝ちゃったらしい。でも電気なんていつ消したっけ? 布団もちゃんと被ってるし? いつの間に完全睡眠モードに入っちゃったんだろう。寝ぼけた頭で考えながら暗い部屋の中を見渡して、テーブルの方を見て固まった。何かが床に――安積さんが床で寝てる!
 マズい。部屋の主が帰ってきたのにも気付かずにベッドを乗っ取って寝ちゃってたなんて。
 窓から差し込む街灯の薄明かりで壁の時計を見ると、時刻は深夜というか朝というかの4時。今更起こすのも悪い。かといってこのままオレがベッドで寝ちゃうってのも気が引ける。
 暗がりにも目が慣れたし、灯りは付けずにそっと床に降りて安積さんの顔をのぞき込むと、安積さんはクッションを枕にしてバスタオルを羽織っただけで眠っている。
 押し入れから昨日オレが使わせてもらった予備の布団を出せばよかったのに。……きっと、物音を立てたらオレが起きると思ってそうしなかったんだろう。
 そうっと、安積さんがオレに着せ掛けてくれたんだろう布団をベッドから下ろして安積さんに掛ける。安積さんはちょっともぞっと動いたけど起きそうにない。
 オレもそのまま安積さんと列んで床に横になってみるけど、全然起きない。ちょっと調子に乗って安積さんの布団の中に潜り込んでみたけど、やっぱり起きない。安積さんは一度寝たら朝まで起きないタイプみたいだな。

 床は硬くて寝心地は悪いけど、ベッドの上よりここがいい。ほんのちょっとだけでいいから一緒にいさせて欲しい。
 安積さんのベッドを乗っ取って寝ちゃうのは悪いから。単に人の気配が恋しいから。ただそれだけだ。
 別に安積さんでなくたっていいんだ。一緒に寝てくれるなら誰でもいい。ただここには安積さんしか居ないから、だから、だからそれだけなんだ。
 それだけの、はずなんだ―― 

(up: 21.Mar.2007)

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